創業融資について(日本政策金融公庫か?制度融資か?)

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

銀行等からお金を借りて開業する、そのようにお考えの方もいらっしゃるでしょう。

このような融資は、一般的に「創業融資」と呼ばれるものです。この創業融資、ほとんどの場合で、「日本政策金融公庫」を使うのか、「制度融資」を使うのか、の二択になります。

どちらかが有利か検討してみましょう。

それぞれの融資の特徴

日本政策金融公庫の特徴

「日本政策金融公庫(にほんせいさくきんゆうこうこ)」ですが、以前は「国民金融公庫」という名前でした(昔から事業をされていらっしゃる社長様には、こちらの名前の方が、聞きなじみがあると思います)。

平成20年10月1日に、「国民金融公庫」が「日本政策金融公庫」という名前になり、株式会社となりました。ですが、株主は100%国ですので、公共的な金融機関という意味では変わりません。

また、融資先は、約9割が従業員9人以下の中小企業ですので、その意味でも中小企業を知り尽くしていると言っていいでしょう。

なお、日本政策金融公庫は預金業務(お金を預かるという業務)は行っていません。ですから、日本政策金融公庫のイメージは、「中小企業にお金を貸すのが専門の公的な銀行」、といったことになります。

制度融資の特徴

「制度融資」という名前の銀行があるわけではありません。役所(区役所や市役所等)を通して融資の申し込みをする制度を制度融資と呼んでいるのです。

役所から書類審査や面接があり、それが通りますと、街の銀行からお金を借りることになります(お役所から直接借りるわけではありません)。

メリットは、お役所が利息や保証料の一部を負担してくれるということです。

 

どちらで申し込むとトクか?

どちらで申し込むのが一番トクか?
簡単に整理してみました。

  日本政策金融公庫 制度融資
融資期間 約1ヶ月 約2ヶ月
利率 高い 安い(※)
許認可取得 申し込みの後 申し込みの前
保証協会 不要 原則として必要

(※)利子補給(役所より利息の補助が出るため安くなります)

融資がおりる期間

融資がおりる期間は、一般的には日本政策金融公庫の方が短いです。

日本政策金融公庫は、支店の窓口に、融資を直接申し込むことができます。

ですが、制度融資は、まずは役所(事業を始めようとする区役所や市役所の窓口)に申し込みをします。そして、役所から合格通知(紹介状)を発行してもらったら、その書類を持って、街中の銀行に申し込むのです。2段階の手続きを踏むため、時間がかかるのです。

ですから、創業融資をお急ぎの方は、日本政策金融公庫での借り入れを検討されると良いでしょう。

利率

利率は、制度融資の方が安いです。というのも、役所から利息の補助金(利子補給金)がでるからです。

ですが、高い安いといっても、両者の利率の差は、約0.5%~約1%程度しか変わりません。1,000万円借りているならば、年間数万円の差しかありません

また、利息の補助があるといっても、ほとんどの場合、半年後や一年後の後払いのため、注意が必要です。

役所の許認可をいつ取るか

飲食店や建設業といった、役所からの許認可が必要な事業は、本来であれば、許認可がとれてから融資を申し込むことになります。

ですが、日本政策金融公庫では、原則として、許認可をとる前でも、融資を申し込むことができます。

これらの許認可をとるためには、早くても1ヶ月~2ヶ月程度かかります(役所での処理やお店の内装等が終わらないと許認可はおりません)。

急いで開業したい場合は、日本政策金融公庫の方が融通がききますね。

なお、このことについて、日本政策金融公庫の担当者の方とお酒を飲みながら話したのですが、「制度融資は頭が固い!実態にあってない!」と憤慨されていらっしゃいました。私も同感です(笑)

保証協会の保証

日本政策金融公庫は、保証協会の保証はつきません(公的な銀行が、保証協会という公的な機関に保証をお願いするのはおかしいため)。
また、連帯保証人もできるだけ付けない方向で融資は進められています。

制度融資は、原則として保証協会の保証をつけることが条件です。そのため、保証協会に保証料を払う必要があります。ですが、これも役所から一部が補助されますので、実質的な負担は少ないでしょう。
また、連帯保証人については、日本政策金融公庫と同じく、付けない方向で進められています。

 

結局、どちらで創業融資を申し込んだ方がトクなのか?

どちらも一長一短がありますので、難しいところではあります。

これは私の個人的な意見なのですが、どちらがよいかと言われれば、「日本政策金融公庫の方がよいでしょう」、とお伝えすることにしています。

というもの、制度融資は、お役所が相手なので、色々と形がきまっており、時間がかかるからです。

それに対し、日本政策金融公庫は、融資担当者にもよりますが、フットワーク良く動いてくださる印象です。

また、日本政策金融公庫の場合、税理士の紹介であれば、申込先を選ばなくてよい、ということも挙げられます。

制度融資の場合、基本的には事業を始めようとする場所の役所に出向く必要があります。ですが、日本政策金融公庫の場合は、創業場所が関東近辺であり、税理士の紹介があれば、今の勤務先の最寄りの支店で相談することが可能なのです(税理士の紹介がないと開業予定地の最寄りの支店に申し込むことになります)。

もちろん、利息は制度融資の方が安いです。ですが、年間、たかだか数万円です。ビジネスはスピードが大切です。数万円のために、開業が1ヶ月~2か月遅れてしまっては、元も子もありません。

ですから、総合的に考えて、創業融資の申し込みは、日本政策金融公庫の方がよいと思います。

 

日本政策金融公庫と制度融資を同時に申し込んではダメか?

これも以外と多い質問なのです。

答えとしては、「法律ではダメとなっていない」というお答えになります。同時に申し込み、両方融資がおりた。そうしたら、利率が高い日本政策金融公庫の方をすぐに返済してしまう・・・。

このような方法は、違法ではありませんが、融資担当者の心証はよろしくないでしょうね。ですが、これにも色々な方法がありますので、税理士にご相談ください(笑)

 

自分で申し込むべきか、税理士にサポートをお願いすべきか

自分で申し込む場合

ご自分で事業計画書を書く必要があります。ですが、今までおつとめだった方は、運転資金の資金繰り表や、予測表の書き方に不慣れでしょう。

そのため、融資担当者のところに何度も通い、書類を少しずつ揃えることになるでしょう。

税理士にサポートをお願いする場合

日本政策金融公庫の例ですが、税理士の方から創業融資担当者に電話し、事前に根回し(ご説明)をすることが可能です。

根回しといっても、特別なことではありません。
「**のような事業を始めようとする方がいるんだが、融資がおりる見込みはありますか?」とお聞き、紹介するのです。

融資担当者のところには、本当に色々な相談がくるそうです。なかには、「夢のまた夢」といった事業計画をお持ちの方もいるそうで、本当に忙しいとのことでした。

ところが、税理士経由で来る相談は、一度、税理士というフィルターを通しているため、問題点が整理されていて、比較的、話がスムーズに進むとのことでした。

また、これはある担当者のお話ですが、

「窓口の人間は説明下手で杓子定規なことしか言わないでしょう。自然と営業成績も悪くなります。だから窓口にまわされているんですよ。何かあれば私が何とかしますから、税理士先生から私に直接連絡をください!」

との力強いお言葉を頂きました(笑)

税理士とお付き合いのある融資担当者を直接紹介してもらえると、話も早いと思いますし、融通も聞くと思います。

開業したら税理士が必要になる場面が出てくるでしょうから、融資を申し込む前に税理士に相談してみるのもよいかもしれません。

 

創業融資には、この他にも色々なハードル(自己資金・事業計画書等)があります。

これらをクリアするためには、最低でも半年~1年前くらいからの準備が必要ですので、開業をお考えの方は、早めにご準備頂く事をおすすめしております。

皆様の事業の成功をお祈りしております!

※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。