会社設立によるデメリット(社会保険への強制加入)

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

個人事業を会社にした場合、メリットもありますが、もちろんデメリットもあります。今回はデメリットのうち、社会保険料の負担について考えてみたいと思います。

会社は社会保険に強制加入となります

個人事業であれば、従業員が5人未満の会社や、一定の業種(ビル清掃業等)は、社会保険に加入しなくても良いことになっています。しかし、会社(法人)は強制加入となります。

じゃあ、「加入すればいいじゃないか」とおっしゃるかもしれませんが、社会保険料は会社にとって重い重い負担になるのです。では、実際に会社で社会保険に加入した場合、どれくらいの負担になるのでしょうか?

実際の負担額はいくらになるのか?

会社が負担する社会保険料ですが、「給与の支給額×約13%~14%」となります。地域によって負担額が若干違いますが、おおむねこの金額になります(東京都中央区にある会社を前提としています)。

  • 協会けんぽ
  • 地域・・・東京
  • 年齢・・・40歳未満
  • 時期・・・平成27年8月現在
  • 給与月額・・・30万円(交通費込)

この場合、まずは個人の給与から「41,166円」(健康保険料14,955円+厚生年金保険料26,211円)を天引きします。
これに同じ金額41,166円を会社が負担し、合わせて82,332円を毎月末に、会社が役所に支払うのです。

そうなりますと、給料30万円の正社員が5名いれば、「41,166円×5名=205,830円」となり、
毎月205,830円の負担増となってしまいます(年間にしたら約240万円の負担増です)。

社会保険料の負担がいかに大きいか、お分かり頂けましたでしょうか?

誰を加入させなければならないか?

正社員は原則として全員を加入させなければなりません。パートさんも、正社員のおおむね3/4以上働いている場合は加入させなければなりません。

この「おおむね」というのがポイントです。明らかに3/4を超えていれば、加入させなければならないでしょう。
ですが、3/4を超えたり超えなかったりというのもあるでしょう。年金事務所の調査があった場合は、きちんとそのことを説明できるようにしておきましょう。

また、年に1回、定時算定という手続きがあります。これは、4月~6月の給与を年金事務所に届けでるというものですが、東京の場合は3年に1回程度、調査のため出頭?しなければなりません。

そのときに、未加入とされた場合は、原則として過去に遡って加入しなければなりません(ケースバイケースですが)。

ですから、きちんと加入しなければならない方は、最初から加入しておくことが大切です。

社会保険料を少しでも削減する方法とは?

社会保険料は、「健康保険料」と「厚生年金保険料」の2つから構成されています。

この社会保険料を少しでも削減するには、どうすれば良いのでしょうか?
いくつか方法がありますが、代表的な方法を挙げてみましょう。

国保組合に加入する

普通の会社は、「協会けんぽ」という制度に加入します。ですが、一定の業種を営んでいる会社は国保組合(国民健康保険組合)に加入することができるかもしれません。

国保組合に加入できれば、健康保険料については本人負担のみとなり、原則として会社負担はなくなります。ですが、本人負担額は国保組合によって異なりますので、毎月の保険料を確認してから加入されるようにしてください。

加入できる国保組合は、食料品販売業のための「東京食品販売国民健康保険組合」、医師のみが入れる「医師国民健康保険組合」といった具合に、地域や会社の業種によって異なります。詳しくは社会保険労務士に確認してみましょう。

賃金体系を変更する

賃金体系を見直すことにより、社会保険料を削減できる場合もあります。定期昇給時期の変更、退職日の変更、賞与支給体系の変更等、色々な方法が考えられます。

 

この他にも、労災保険料の合理的計算による節約、雇用形態変更による雇用保険料の節約等、色々な方法が考えられますが、これらを実践するには、専門的な知識が必要になります。

そして、会社状況や社員の心情、さらには法律違反にならないように、社会保険料削減を行うには、社会保険に精通し、さらには経営者と社員との関係を調整できるベテランの社会保険労務士の力が必要になります。

弊事務所では、社会保険料の削減で実績のある社会保険労務士をご紹介することができます。社会保険料の負担で悩まれている経営者様はお声かけ頂ければと思います。

※本記事に関する無料相談はお受けしておりません。あらかじめご了承ください。