会社設立の前に、社会保険についても考えましょう!

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

中央区日本橋で、会社設立サポートを行っている、税理士の石橋です。

個人事業が順調にもうかってきた場合、会社設立を検討する場合があります。
ご存じの方も多いと思いますが、個人事業の場合は、従業員数が少なければ社会保険に加入しなくても良いのです。
また、従業員の人数が多くても、一定の業種は社会保険に加入しなくても良いこととされています。

ですが、会社(法人)は、社会保険に必ず加入(強制加入)しなければなりません。
私は社会保険労務士(社会保険や年金に関する専門家)ではありませんが、そのようなご質問を続けて頂きましたので、社会保険の加入義務について、少しご説明していきたいと思います。

社会保険の加入義務者とは?

(1)個人事業の場合

個人事業の場合は、常時5人以上の従業員を使用する場合は、社会保険に加入しなければなりません
(ですが、サービス業等の一定の業種は加入義務が免除されています)
ですので、従業員が少ない会社であれば加入義務はないですし、従業員が多くなってきても一定の業種であれば、加入しなくても良いことになります。

(2)会社の場合

会社(法人)の場合は、社会保険に強制加入となります。例え、人数が社長1人だけであったとしてもです。
(個人事業のような、人数が少ない、一定の業種といった、特例はありません)

ここまでは皆さん、ご存じだと思います。

 

なぜ社会保険未加入の会社が多いのか?

新聞報道等によると、平成27年現在で、全国で約79万の会社が、社会保険に加入していない(未加入)とされています。
この中には、休眠状態の会社もあるでしょうし、実態のない会社もあるでしょうから、一概にはいえませんが、相当な数の会社さんが社会保険に入っていないことが想像できます。

では、なんで会社は社会保険に加入できないんでしょうか?

それは、社会保険料の負担が高すぎる!からなんですね。

例えば、お給料が年間400万円の社員がいたら、会社の負担額は1人あたり年間約54万円となってしまいます!!!
(具体的な計算方法は次のページをご覧ください)

「会社設立によるデメリット(社会保険への強制加入)」

会社は色々な税金を払います。法人税、都民税、消費税、固定資産税等々・・。
それらの、どの税金よりも、社会保険の負担の方が大きくなってきているのです!

社会保険料は今後も上昇が予想されます。ですので、
「社会保険料を払えなくなって倒産」
という会社も、今後は増えてくるのではないかと思います。

 

誰が社会保険に入らなければならないか?

上記のような理由のため、役員や従業員をできるだけ社会保険に加入させたくない、と考える会社さんもあるかもしれません。
ですが、役員や従業員が下記の条件に該当したら、必ず加入させなければなりません。

(1)役員

お給料をもらっている役員は、原則として全員が社会保険に加入しなければなりません。
特に、代表取締役(会社を代表する役員)は、労働時間が短くても、必ず社会保険に加入しなければならない、とされています。

よく、
「私(代表取締役社長)は毎週1回しか会社に来ないから、社会保険に入らなくてもいいよね?」
というご質問を頂くのですが、役員の場合は、社員のように、労働時間の概ね3/4といった要件がないので、お給料が出ていれば必ず加入することになります。

また、代表取締役以外の、普通の役員ですが、この辺りはケースバイケースと言われています。
常勤役員は原則として社会保険に加入する必要がある。
対して非常勤役員は加入義務がない、と一般的には言われています。
常勤か非常勤かの判断は難しいですし、細かな要件がありますので、このあたりは専門家である社会保険労務士の先生にご相談された方がよいと思います。

(2)従業員

役員以外の、普通の従業員(社員・パート)は、労働時間によることとされています。

社員はフルタイムで働くので必ず社会保険に加入しなければなりません。

問題はパートやアルバイトになります。
これは勤務時間や勤務日数で判断することになっています。具体的には、

「勤務時間及び勤務日数のいずれもが、正社員の(おおむね)4分の3以上

のパートやアルバイトは、社会保険に加入しなければなりません。

4分の3を1分超えたら必ず加入しなければならないかというと、そうでもないんですね。「おおむね」となっているのですから。
これを考えますと、微妙なケースも出てくるかと思いますた、その場合は総合的に考えることになっています。

この「おおむね」という表現ですが、昔、役所が出した文章(内簡)というものが根拠だそうです。税務の正解でも、よく「事務連絡」という文書が出ます。税務でも社会保険でも、お役所が出した文書には従わざるをえないようです・・・。

なお、この労働時間の要件ですが、平成28年10月より改正される予定です。
具体的には、従業員が500人を超える会社は、パートでも社会保険に加入しなければならなくなるかもしれません。
要件は次のようになります。

  • 従業員500人超の大企業
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 継続して1年以上の使用見込みあり
  • お給料が毎月88,000円以上であること

例えば、スーパーのレジでパートされている奥様方で、毎月の給料が88,000円を超えている方は、社会保険に加入しなければなりません。
これを回避するためには、働く時間を短くすることになりますから、政府が提案してい「女性も働ける社会」と逆行することになります・・・。
どうなってしまうんでしょうか・・・。見守りたいと思います。

 

社会保険料の予算も考えて会社設立しましょう!

個人事業がもうかってきたから会社設立しよう。ごく自然な流れです。

その際、個人事業時代では、かからなかった経費が、会社にはかかることになります。
その経費のなかでも、社会保険料はダントツに多いのです。
ですから、これから会社設立をお考えの方は、まずは社会保険の負担を考えてから設立を検討することになります。

また、会社設立しても社会保険に加入しない。そのような方もいらっしゃるかもしれません。
ですが、そのような会社へは、年金事務所の調査が入るかもしれません。

社会保険そのものに加入していない会社を、未適事業者(みてきじぎょうしゃ)と言います。
マイナンバー制度が平成28年より始まりました。国税庁のマイナンバーサイトを見れば分かるのですが、税務署は会社にもマイナンバーをつけて管理しています。

今後は税務署が年金事務所に情報を提供して、社会保険の未適事業者(未加入の会社)をあぶり出し、調査するそうです。
また、今現在、加入していない会社様にも、年金事務所から加入を促すお手紙が何通も届いているかと思います。

最近、未加入の会社で特に年厳しいのが「建設業」だと言われています。
建設業の顧問先が多い社会保険労務士に聞いたところ、最近は、社会保険に加入していないと大会社からの下請け工事を受注できないそうです。

今現在は、社会保険に加入していない会社様も、いずれは必ず加入しなければならなくなります。
ですので、これから会社設立をお考えの方は、社会保険料の負担増を織り込んで会社設立を検討してください。

会社設立すれば、確かに税金は安くなるかもしれません。
ですが、これからは「税金+社会保険料」のトータルの負担で考える必要があるのです!
場合によっては、個人事業の方が負担が少なかった、ということであれば、目も当てられません・・・。

当税理士事務所では、会社設立前に「税金+社会保険料」のトータルでの負担を考慮したシミュレーションを行っております。
会社設立をお考えの方、個人事業から会社に切り換えを検討されている方は、当税理士事務所の初回1時間無料相談をご利用ください。

※本記事についてのご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。