飲食業の確定申告のポイント

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飲食業の確定申告について注意すべきポイント、間違えやすいポイントをまとめてみました。

現金管理について

現金管理の重要性

飲食業は、売上の大半を現金売上が占めています。
ですから、現金管理を正確に行うことが大変重要になります。
レジ打ちや釣り銭のミス等で現金の過不足が生じてしまうこともあります。
これらを防ぐためにも、レジ金額と売上高が一致しているか、毎日の業務終了後に必ず確認しましょう!

具体的には、毎日の営業が終わったとき、帳簿上の現金残高と、実際の現金残高とを照合する必要があります。
そして、現金過不足を確認することが必要となります。
特に、アルバイトにレジを任せているお店は要注意です。(悪意はなくとも)レジのお金が不足してしまうことがあるかもしれません。

税務調査では、事前連絡がなく、いきなり店舗や自宅等に調査官が訪問することがあります。
税務署員が指定した日の売上が正しく記帳されているか。また、実際の現金残高が出納帳の残高と一致しているか等・・・。
いつでも説明できるように、きちんと管理しておきましょう。

税務署員にきちんと説明できない場合や、実際の現金残高と帳簿残高とに違いがあった場合は、故意に売上を計上していないとの疑いがかかってしまい、その後の調査も厳しくなってしまうかもしれません・・・。
気をつけたいものです。

ミスを防ぐためには?

現金過不足(レジ現金と帳簿上の現金残高の差額)が多く発生するような場合には、現金の締めをランチタイム終了後、閉店後と2回以上にする等の工夫が必要です。
また、レジで精算する人間を、アルバイトから責任のある社員にすることにより、現金過不足が減った事例もありました。

収入についての注意点

収益計上の時期

飲食業での収入の計上時期は、飲食サービスが行われた日です。
具体的には、お客様に料理をお出ししたとき、出前で配達した日です。

普通は、そのときにお代をもらいますから、特に問題はないでしょう。
問題があるとすれば、代金は後でもらう形で料理をお出ししたときです。
(いわゆる「ツケ」というやつですね)
この場合は、お代はもらっていませんが、収入に入れる必要がありますので、注意が必要です。

また、クレジットカードの利用があった場合、収入はカード会社からの入金があった日ではなく、実際に料理を出した時(つまりカード決済をした日)になります。
クレジットカードの場合、カード会社から加盟店手数料として5%前後の手数料が差し引かれた額で入金されるため、入金額を売上として計上すると過少計上となってしまいます。
売上額が過小であると、消費税額の計算の際に問題となりますので、総額(手数料を引かれる前の金額)で収入に計上するようにしましょう。

割引券やポイントカードの利用

飲食業では、集客対策として、次回来店の際に利用できる割引券や、来店回数・利用額に応じたポイントを付与し、ポイントに応じて割引を行う等のサービスを実施しているお店も多いかと思います。
割引やポイントカードの取り扱いですが、これらを発行した時ではなく、実際に利用した日(お客様が割引券やポイントを使って購入した日)売上値引として処理します。

 

領収書についての注意点

領収書の管理

領収書を発行した場合は、発行した控えを正しく保管し、通番をふる等の方法で管理しておきましょう。
といいますのも、こちらは悪くなくても、相手(お客様)側の税務調査があったとき、そのお店できちんと食事をしたか(架空領収書で経費にしていないか)を確認に、税務署員が来ることがあるからです。
(これを「反面調査」といいます)

ですから、後日疑われないように、書き損じがあった場合でも、捨てずにそのままにしておく、といった対策も必要でしょう。

収入印紙が必要な場合、必要でない場合

領収金額が5万円以上(平成26年4月1日以降作成分から)のものは、収入印紙を貼付する必要があります。
この場合、どうやって5万円以上かどうか判断するかですが、税抜金額ときちんと分かるのであれば税抜金額で判断します。
逆に、総額での記載しかない場合は、総額で判断することになります。
ですから、印紙を節約するためにも、きちんと税抜金額と分かるような領収書にしましょう。

また、クレジットカードで決済を受けた場合には、現金や有価証券を受け取ったわけではないため、印紙税法上の「課税文書」には該当しません。
そのため、印紙税の負担は発生しません。カード決済の際は、領収書控えに、カード決済である旨を記載しておきましょう。

 

自家消費(自分で食べてしまった等)についての注意点

所得税

飲食店を経営している場合、食材を自分や家族で使ってしまうことがあると思います。
その場合は自家消費になり、売上と同じ考え方で、使った分を収入に計上しなければなりません。

その食材の仕入金額以上で収入金額にしている場合は、その金額が、販売価額のおおむね70%以上であれば、その仕入金額をそのまま収入金額にすることが認められます。
レストランでは、食品の「通常の販売価額」を計算することは難しいため、仕入金額をそのまま収入金額にするのが良いでしょう。そのためには、定期的に自家消費の金額を計算できるような仕組みをつくっておきましょう。

消費税

自家消費を行った場合、消費税の計算にも影響が出ます。
自家消費により、自分で食材を使ってしまった場合は、その食材の使ったときの時価を基準として消費税がかかります。

具体的には、その食材の仕入金額以上で、かつ、通常の販売価額のおおむね50%以上の金額であれば課税標準の対価の額として認められます。

所得税と消費税で、金額の基準が違うのです・・・。
悩ましいですね。
ですが、個人事業の飲食店で、自家消費が全くない。そんなお店はないと思います。
青色決算書の2ページ目に「自家消費等」の欄があります。
ここが空欄ですと、無用な税務調査を生むかもしれません。
「私はきちんと自家消費を収入に入れています」
そのアピールのためにも、ここの部分に、きちんと計算した自家消費の金額を入れておきましょう!

 

食事の現物支給

従業員に食事を現物支給する、いわゆる「まかない」を出した場合にも税金はかかります。
具体的には、食事を食べた従業員について、食事代相当額の経済的利益が発生することになりますので、お給料を現物でもらったとして、源泉所得税の問題が発生してしまいます。
ですが、まかないを提供することは業務上の必要性や福利厚生的な意味合いもあることから、以下の要件を満たしていれば、給与としての課税は行われません。

課税されないための要件

  1. 従業員が食事の価額の半分以上を負担していること
  2. 食事の価額から従業員負担額を引いた金額が月額3,500円以下であること

この場合の食事の価額とは、以下のようなものをいいます。
自社で調理した場合:その食事の材料費や調味料等の直接材料費に相当する金額
他より購入した場合:購入価額に相当する金額

また、残業をさせた場合や、宿直勤務をさせた際に支給する食事は、業務上必要となる食事なので、実費弁償の観点から、無償で支給した場合であっても、給与として課税しなくてよいこととされています。

 

家族に支払う給与

青色専従者給料

青色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族(15歳未満を除く)で、その青色申告者の事業に専従する人への給料は、適正額であれば必要経費に算入できます。
(ですが、給与を出す際は「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出書」を税務署に提出する必要があります)

ただし、以下のような方は青色専従者にはなれません。

・高校、大学等の学生
・他に職業のある者

事業専従者控除

青色申告をされていない方でも、生計を一にする配偶者その他の親族(15歳未満を除く)で、1年のうち6ヶ月以上専従している人がいれば、その専従者1人に月50万円(配偶者の場合は86万円)を控除することができます。
(ただし、所得の金額が低い場合は、控除額がもっと少なくなる場合もあります)

 

外国人の従業員についての注意点

非居住者に対する源泉徴収

外国人を雇った場合は、その外国人が、その仕事にどれくらい勤めるか。それによって、お給料の源泉額が変わります。
具体的には、就労ビザ等によって、日本に1年以上いることが明らかな場合は、日本人と同じようにお給料から源泉します。

ですが、最初から1年未満、例えばワーキングホリデーでの就労体験等は、最初から1年未満であることが明らかですから、お給料から原則20.42%を控除して納税は完結します。

また、社会保険関係は税金とは別の考え方になります。
ですから、滞在が1年未満であっても、社会保険や労働保険に加入しなければなりません。

外国人雇用のポイントは、最初に就労ビザやパスポートを確認し、コピーを取ることです。
(怪しいと思ったら、入管法に詳しい行政書士等に相談した方が良いでしょう)

 

飲食業は参入しやすいため、競争が激しく、かつ、利幅が薄い商売です。
そのため、税務面はどうしても後回しになりがちです。
ですが、税務署は待ってはくれませんから、ぜひ、きちんとした現金管理、経費管理をして頂き、余計な税金を払わないようにしてください。