税務署と年金事務所との厳しさの違い

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

最近、社労士(社会保険労務士)と社会保険について話す増えてきました。みなさん、社会保険について色々と悩まれているんだと実感します。

今回は、税務署(税金を取り扱っている役所)と、年金事務所(社会保険を取り扱っている役所)との、「厳しさの違い」について、色々と考えてみたいと思います。

なお、文中の意見は個人的見解ですので、あくまでご参考程度にしてください。

そもそも税務署と年金事務所は何をしているのか?

2つの役所の厳しさについて考える前に、それぞれの役所が何をしているか、簡単にご説明しておきましょう。

税務署とは?

税務署とは、「税金を取る役所」です。これは皆さんもご存じでしょう。
税金と一口にいっても、色々な税金があります。

  • 国の税金、地方の税金
  • 個人にかかる税金、会社にかかる税金
  • 所得(利益)にかかる税金)、財産にかかる税金

具体的に名前で言いますと、

  • 所得税
  • 法人税
  • 相続税
  • 贈与税
  • 消費税
  • 酒税

といった具合でしょうか。税金は種類が多く、かつ、とても難しくなっていますので、きちんと計算するだけでも大変です。ですから、税金を計算するだけでも多くの公務員が必要です。

また、税務署は「税務調査」をします。税務調査の目的は、皆さんがきちんと税金を払っているか、チェックすることです。この税務調査にも多くの公務員が必要になります。

年金事務所とは?

年金事務所という名前、あまり聞いたことのない方もいるのではないでしょうか。

以前は、「社会保険事務所」という名前でした(この方が分かりやすいですね)。
ですが、年金不祥事があって、組織再編したんですね。
ですから、今は年金事務所といいます。

この年金事務所ですが、社会保険関係の手続き全般を行っています。例えばですが・・・

  • 会社の社会保険手続き(加入や喪失など)
  • 個人の社会保険手続き(年金請求等)
  • 障害年金の請求

社会保険も色々と難しい手続きがありますし、年金を受け取る方も多いですので、税務署と同じく、多くの公務員が採用されています。

また、年金事務所は、税務署と同じく「社会保険の調査」をしています。
社会保険に加入していない会社に督促状?を出して加入を促したり、年に1回の定時算定の時に加入すべき者が加入しているかといったチェックも行っています。
また、実際に会社に立ち入り調査もしているようです。

 

税務署と年金事務所のどちらが厳しいか?

私は税理士ですので、税務署のことは分かります。ですが、年金事務所のことは社会保険労務士の方がもちろん詳しいと思います。ですので、あくまで私の主観であることをご理解ください。

私の結論ですが、「税務署の方が厳しい」と思います。それは次のような理由からです。
(税理士だからそう言うだろう・・・という突っ込みは、なしでお願いします・・・)

書類の確認方法や確認度合いについて

税務署が税務調査に来た場合、書類を隅から隅までチェックします。
もちろん、全部の資料は見れませんから、ポイントを絞ってチェックします。この「ポイントの絞り方」が、結構すごいんですね。

税務署には、税務調査のマニュアルもありますし、税務調査をするための研修にも多くの時間をさいて行っています。さらには伝統芸の継承のような、先輩から後輩へのノウハウの伝承?も行われています。税務署はある意味、軍隊的な役所ですので、厳しいんですね。その厳しい指導があるおかげで、新人職員も、税務署入署から数年で、税務調査をこなすことができます。

年金事務所はどうなのでしょうか?
もちろん、私は年金事務所の調査に立ち会ったわけではないので、わかりかねますが、社労士先生とお話したところ、書類をひっくり返すということまではやらないようでした。
(ただし、大規模な会社で、全員が社会保険未加入、といった状況であれば、徹底的にやる場合があるようですが・・・)
また、調査の結果、本来であれば社会保険加入対象者ではあるが、既に退職しているため、遡って本人から保険料を徴収しない、ということも実務上は多く行われているようです。

さらには、定時算定のチェックも、きちんと行われない場合もあるようです。
3年に1回程度、会社が年金事務所に出頭?し、加入すべき者をきちんと加入させているかチェックします。
チェックのために、色々な資料を持って行きます。「賃金台帳」「出勤簿」「源泉所得税納付書」・・・。
私も、顧問先様が一人で行くのは心配なのでついてきてくれというので、社長様と社労士先生と私とで、何回か同行したことがあります。
そのとき、きちんとチェックしていない、という印象を感じました。
(もちろん、社会保険事務所の人員が足りていないのが、一番の原因です。ただ、それは税務署も同じなので、きちんとポイントを絞って調査すべきなのでしょうが・・・)

もちろん、弊事務所の顧問先様は、皆様きちんとやっておられますので、厳しくチェックされても問題ありません。ですが、もし、きちんと社会保険に加入していない会社があっても、このようなチェック体制では見抜けないことも多いと思います。

「会社の数が多すぎてチェックしきれない」といったご意見もよく聞きます。ですが、それは税務署も同じですので、言い訳にはならないと思います。

 

というわけで、私の結論は「税務署の方が厳しい」ということになります。
(ただし、社会保険労務士の先生に言わせると、「それは税理士だからだよ。年金事務所も怖いときは怖いですよ」と言われてしまいますが・・・)

ですが、これからは事情が少し変わってくるとおもいます。

それは、「マイナンバー制度」が始まるからなんですね。マイナンバーの情報と、社会保険の情報をリンクさせれば、未加入者の情報は簡単にあぶり出せます。

また、国は税収の不足分を補うために、社会保険料の徴収に力をいれてくるでしょう。

ですから、年金事務所は、これからとても怖い役所に変貌するかもしれません・・・。そうなりますと、社会保険労務士の先生の地位と役割が益々重要となってくると思います。

そんなときのために、税理士と社会保険労務士とを上手く使い分けて、税金の節税、社会保険料の節約、両方を意識して事業をしていくようにしましょう。

(弊事務所では顧問先様の社会保険について、一般的なご相談はお受けしておりますが、細かな内容や実際の書類記入等は、提携している社会保険労務士の先生にお願いしております。餅は餅屋。専門家にお願いした方が良いと思います)

※本記事についてのご質問には、お応えしておりません。予めご了承ください。