不動産を売却した際の注意点(買った金額が分からない場合は?)

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

不動産売却して利益がでた方は、所得税の確定申告をして、税金をお支払いになる必要があります。
今回は、そのときの注意点、特に、不動産を買った金額が分からない場合の注意点について、ご説明していきましょう。

利益がでた場合は税金を払う必要があります

不動産を売却して利益が出た方は、所得税の確定申告をして、税金をお支払いする必要がございます。

そのときの税金ですが、次のように計算します。

 (売却した金額 - 買った金額 - 売却にかかった費用)×税率(約20%)

「売却した金額」

これは不動産の売買契約書に書いてありますから、すぐにお分かりになるでしょう(不動産の売買契約書を作らないことは、まずないでしょうから)。

間違いやすいポイントとしては、売却代金に固定資産税の清算金を含めることに、ご注意ください。

固定資産税は、その年の1月1日時点の所有者にかかります。
そのため、本来であれば、所有者(売主)が1年分を負担すべきなのですが、それでは不公平ということで、実務上は、売却日を基準にして、売主と買主とが日数按分し、それぞれが負担します。

そうしますと、売主は固定資産税をもらうことになります。これを固定資産税の清算金といいます。

固定資産税の清算金は、売却した金額に含まれるのです。入れ忘れても、追加の税金は数万円程度なのでしょうが、税務署に指摘されたら、罰金も払わなければいけません。きちんと売却金額に含めるようにしましょう。
(税理士でも、たまにお忘れになる先生がいらっしゃいますので・・・)

「買った金額(取得費)」

10年前~20年前くらいに買った不動産については、買った金額を証明する資料(例えば売買契約書)が残っていると思います。

ですが、30年以上前になると、どうですか?
また、相続した不動産は、書類が残っていないかもしれません(弊事務所の事例では、お亡くなりになったお父上が、全ての書類を処分してしまっている場合もありました)。

買った金額が分かりませんと、「売却した金額×5%」で計算することになっています。

そうなりますと、売却した金額の約2割もの税金がかかってしまいます!これについては、後でご説明させて頂きます。

「売却にかかった費用」

売却にかかった費用も、利益から引くことができます。
例えばですが・・・

  • 不動産業者への仲介手数料(売却金額×3%+6万円+消費税)
  • 契約書への印紙代
  • 測量費用
  • その他の売却のために直接必要な費用

このなかで問題になるのが、測量費用でしょうか。

測量費用は、売却した時期と測量した時期が近ければ、問題なく経費にできます。
この測量は、不動産を売るためにしたと証明できますから。

問題は数年前に測量した場合です。この場合、売却したときの経費にならない可能性が高いです。

このような測量費用は、不動産所得の経費(家賃収入や地代収入の経費)か、不動産を買った金額に含める、のいずれかで処理することになります。

不動産所得の経費にできれば良いのですが、これもなかなか難しいです(地代等の問題でお隣と揉めていれば経費になりますが)。

できない場合は、不動産を買った金額に含めることになりますが、「売却した金額の5%」で計算する場合は、この測量費用は買った金額に含めることはできません。

そうなりますと、この測量費用は、単なる費用倒れで終わってしまいます・・・。問題が残りますが、致し方ないんです。

「税率(約20%)」

売った金額から、買った金額、売却にかかった費用を引きました。

そうすると、手取り金額(利益)が出ると思います。

この利益に税率をかけて、税金が計算されます。

税率ですが、次のようになります。

  • 20%(取得してから5年を超えて売却した場合)
  • 39%(取得してから5年以内に売却した場合)

ほとんどの方は、不動産を取得してから5年を超えていらっしゃるでしょうから、税率は20%になります。
(正確には復興特別所得税がかかるので、20.315%になるのですが、ここでは20%でご説明します。また、取得には相続は含みません。よって先祖代々の土地を相続して、すぐに売っても20%になりますので、ご安心ください)

ですから、利益が1,000万円でしたら、約200万円の税金をお支払いすることになります。

 

買った金額がわからない場合は、どうすればよいか?

これが、今回のテーマです。

先程ご説明したとおり、利益に対して税金がかかるのですから、買った金額が大きければ大きいほど、利益が少なくなって、税金が安くなります。

ところで、税務署へは、税金をきちんと計算した証拠として、確定申告書を提出することになっています。

普通は、この確定申告書に、「売った金額」「買った金額」「売却にかかった費用」の領収書のコピーをつけることになっています。
これは、法律で決められている訳ではないんですが、不動産は金額が大きくなりますので、最初からコピーをつけて、きちんとやっていますよ、と税務署に伝えておくのです(資料がないと税務署も判断できませんから)。

なお、これは体験談ですが、あるお客様の希望で、申告書にコピーを一切つけないで税務署に出したことがあります。案の定、税務調査に来ました・・・。ですから、必ずコピーをつけましょう。

ところで、買った金額が分からない場合は、どうすれば良いのでしょうか?
色々な方法がありますので、考えてみましょう。

色々な資料を探してみる

まずはご自宅の倉庫や書庫を探してみてください。次のような資料があったら、買った金額を証明できます。

  • 売買契約書
  • 売買代金の領収書
  • 当時の相手方とのやり取りメモ
  • 当時の不動産チラシ

売買契約書や領収書があればベストです。これがあれば、買った金額をきちんと証明できます。

これらのきちんとした書類が見つからない場合は、購入時のメモ等を探すと良いかもしれません。

私が実際に経験した事例です。
顧問先様が数十年前に土地を買いましたが、その土地のすぐ隣の土地も、同時に買い手が現れました。
この二つの土地、形や面積がほぼ同じでした。

そして、顧問先様は土地を売却されましたが、ご自宅を探しても、買ったときの契約書が見つかりません。

そこで、私がアドバイス差し上げて、顧問先様に、お隣の土地を買った方を訪ねてもらうようにお願いしました。
(購入者の住所は土地の謄本を見れば分かります)
目的は、お隣の土地を買った方の資料です。

お隣の土地を買った方も、売買契約書を紛失されておりました・・・。ですが、その方は会社名義で買っていたのです。
会社であれば、決算書や当時の帳簿に、買った金額が記録されています。
幸いにも、お隣の土地の購入金額が分かりました。

その方と顧問先様は、同時期に、隣同士、同じ広さの土地を買っているのですから、当然、その購入金額は参考になるでしょう。

その方にご無理をいって、その帳簿をコピーさせてもらい、「この金額で購入しました」と計算して、税務署に提出したところ、特におとがめはありませんでした。

購入時の不動産業者とのやり取りメモでも証拠になりますし、当時の売り出しチラシを参考にする方法もあるでしょう。

色々な資料を探してみてください。

どうしても見つからない場合は?

どうしても見つからない場合は、当時の不動産価格の平均値を使う、という方法があります。

お役所では、昭和30年頃から、日本各地で、不動産価格を調査しています。商業地、住宅地、色々な条件で調査を進めています。これはホームページで公表されていますから、この資料を使って計算するのです。

ですが、どの資料を使うのか、これは税理士等の専門家でなければ判断できません。

この方法は最後の手段ですから、頑張って資料を探すなり、関係者からのお話を聞くなりして、まずは資料を探してみてください。

 

5%で計算するのは最後まで待ってください!

買った金額が分からない場合は、5%で計算することになっています。

先祖代々の土地であれば、数十円?から数万円で買ったかもしれません。

このような場合は、「売却した金額×5%」で計算した方がトクです。
(買った金額が分かっていても、5%で計算できます)。

ですが、20年~30年前に買った土地であれば、購入金額は「売却した金額×5%」よりも高くなるでしょうから、頑張って資料を探しましょう。

また、たまにあるのですが、ご自分で税金を計算しようとして、買った金額を「売却した金額×5%」で計算してしまい、税務申告してしまっている方がいらっしゃいます。

色々なご事情(税金を知らなかった、資料が見つからなかった)があったのでしょうが、この場合も、あきらめないことです。

当時の資料や不動産価格を調べて、合理的な金額が分かったら、税務署に、
「税金を間違って多く払ってしまった。正しく計算するので税金を戻して欲しい」という書類を出すのです。

この書類、「更正(こうせい)の請求」というものです。間違いをしたので直してください、というお願いの書類です。

必ず認められる訳ではないのですが、もしかしたら、税金が戻ってくるかもしれません。トライする価値はあります。

 

不動産売買は大きな金額が動きます。税金も当然、大きな金額になります。取引の前に、税理士と相談する方が安心ですね。