未収地代や未収家賃の貸し倒れ処理について

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税理士 石橋將年(いしばしまさとし)

今回は、未収地代や未収家賃の貸し倒れについて、ご説明させて頂きます。

(平成28年5月9日追記)

地代や家賃の貸し倒れが認められる場合とは?

不動産オーナー様は、お貸しになっている土地や建物から、地代収入や家賃収入をお受け取りになります。これらを、全て受け取る事ができれば、問題ありません。しかし、中には長期間家賃を払わなかったり、家賃を払わないで夜逃げしてしまう方もいらっしゃいます。

これらの地代や家賃の貸し倒れ分については、当然に経費にすることができます。根拠は所得税法の51条2項です。

「居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業について、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。」

要するに、地代収入や家賃収入の貸し倒れが確定したら、その貸し倒れが確定した年の経費にしなさいね、としているのです。

これは、不動産所得が事業的規模(ある程度の規模の不動産をお持ちの方)の方のみに適用されることになっており、小規模不動産をお持ちの方は更正の請求をする(税金を戻す手続きです)ということになっております。(しかし、実務上は判断が難しい部分は、事業的規模として貸し倒れで処理してしまうことも多いでしょうが・・・)これについては、後でご説明します。

 

事業的規模とは何か?

不動産賃貸業では、事業的規模になるか、ならないかが大切です。
事業的規模になると、色々な特典があるからです。

事業的規模は次で判断するとされています。

  • 貸家の場合・・・おおむね5棟以上
  • 貸室の場合・・・おおむね10室以上
  • 土地の貸し付けの場合・・・規模や金額で総合的に判断する
  • 青空駐車場の場合・・・規模や金額で総合的に判断するが、迷った50台以上の貸付スペースがあれば事業的規模になる

これらは、あくまで形式的な判断基準ですので、実態で判断することになっています。貸室が8部屋であっても、賃貸収入が年間数千万円になれば、それは事業といえるでしょう。ですから、「おおむね」という表現になっているんですね。

それでも迷ったら、「その不動産賃貸業だけで食べていけるか。生活していけるか」ということに着目して、事業的規模かそうでないか、判断してみるとよいでしょう。

 

貸し倒れた場合の取り扱い

事業的規模である場合と、そうでない場合とでは、貸倒損失の取り扱いが異なります。

事業的規模の場合

事業的規模の場合は、貸し倒れた年の経費にします。

具体的には、貸し倒れた年の確定申告書の決算書に「貸倒損失***円」と書いて必要経費に算入します。

また、貸し倒れた金額が大きい場合は、税務署もおかしいと思うかもしれません。そんなときは、決算書3ページ目の「本年中における特殊事情」のところに、貸し倒れた経緯を書けば、税務署も考慮してくれるかもしれません。

事業的規模でない場合

事業的規模にならない場合は、更正の請求(こうせいのせいきゅう)という手続きによることになります。

更正の請求書という書類を税務署に出して、「過去の申告での収入は多すぎました。少なく訂正させてください」というお願いをするんですね。

提出期限は、収入計上した確定申告書の提出期限から5年以内ですが、5年を過ぎていても、貸し倒れた時から2ヶ月以内であれば、更正の請求ができます。

では、更正の請求をする際、いつ貸し倒れたと判断すればよいのでしょうか?

これは所得税法基本通達64-1で、事業的規模のときの貸倒損失と同じ基準で判断すればよいとされています。

更正の請求、手間も時間もかかります。できれば事業的規模と判断して処理したいものですが・・・。

 

いつが貸し倒れた時期になるのでしょうか?

地代や家賃は、貸し倒れた時の必要経費にする、または更正の請求をする。それを確認しました。

では、地代収入や家賃収入は、いつが貸し倒れた時なのでしょうか?

これは所得税法基本通達の51-10~51-17で決められています。

具体的に見ていきましょう。

夜逃げして音信不通

通常は保証人に請求すると思いますが、保証人も払わない場合はどうすればよいのでしょう。

この場合は、裁判をするでしょうから、裁判で明け渡し判決が出たて、残置物を撤去したときに、貸し倒れと判断することになると思われます。

事業的規模の場合は事実上の貸し倒れ(51-12)で、事業的規模でない場合は更正の請求をすることになります。

退去後ごねて払わない場合

事業的規模の場合、退去してから1年が経過していれば、形式上の貸し倒れ(51-13)として、未回収分から1円を差し引いた金額(備忘記録として1円を残します)を必要経費に算入することが考えられます。

また、取り立て費用が未収家賃よりも高額であることが明らかであれば、未収が発生したときに貸し倒れとすることも可能です。

事業的規模でない場合は、上記理由が発生したときに更正の請求をすることになります。

入居中であるが家賃を支払わない

これは貸し倒れとして処理することはできません。

現実的には、地代や家賃が滞納した場合は、まずは本人に、ダメなら保証人に催促をします。それでも払わない場合は、期限を区切って内容証明で家賃を支払うよう催促します。

それでもダメなら、内容証明で契約解除を送って、出て行ってもらうことになります(一般的には、解除できる目安は、滞納額が3ヶ月分位になったときと言われていますが、一概には言えません)。

期限までに出て行かなければ、裁判をして出て行ってもらうことになります(家賃保証会社を付けている場合は、保証会社の弁護士が裁判を起こすと思います。)

なお、過去の家賃をさかのぼって減額してあげた場合は、その減額してあげた金額は、所得税法施行令141条の1による、売上値引とされるので、貸し倒れとして必要経費に算入する、または更正の請求をすることになると考えられます。

上記のように処理することになりますが、貸し倒れは税務署が目を光らせる部分です。特に何百万円や何千万円もの貸し倒れになりますと、税務署も必ずチェックするでしょう、ですから、貸し倒れた金額を必要経費に入れる際は、税理士等の専門家の判断を仰いだ方が賢明といえます。

以前の判例(昭和の終わり頃)で、こんなケースがありました。

節税しようとして、毎月の地代を安くして、逆に多額の更新料を受け取った方がいらっしゃいました(こうすれば、平均課税という特例で税金が安くなるのです)。しかし、その平均課税はある条件により適用できませんでした。

そうなると、多額の更新料に多額の所得税が課税されます。そこで、最初の更新料は多額であり間違っていたのだから、過去にさかのぼって直してくれ(更正の請求をしてくれ)という裁判を起こしたのです。しかし、税務署も裁判所も、それは受け取らなくなった年の貸し倒れで処理しなさい、という判断をしました。

判断を誤ると、無駄な税金を支払うことにもなりかねません。たかが貸し倒れ、されど貸し倒れ。税金では、法律と通達で細かく決まっています。判断は慎重にしたいものですね。

 

未収家賃や未収地代が残ったまま相続が発生すると・・・

未収家賃や未収地代が残ったままで相続が発生すると問題です。

というのも、これらのもらえるか分からない未収家賃や未収地代にも、相続税がかかるからです。

このような場合には、相手と交渉するなり、弁護士先生にお願いするなりして、未収家賃や未収地代をどうにか解消しなければなりません。

この、未収家賃・未収地代と相続税の関係について、下記のサイトでご説明していますので、ご興味のある方はご覧ください。

「相続財産の評価(未収家賃・未収地代について)」

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